名前空間(なまえくうかん)はNamespaceの訳語で、名前の集合を分割することで衝突の可能性を低減しつつ参照を容易にする概念である。
ここでいう空間は物理的な空間ではなく、元の全ての組み合わせ可能なものからなる集合全体を指す。つまり英字・数字・記号などを組みあわせて作られる名前全てを含む集合である。名前に結び付けられる実体(型や変数)は、名前がそれぞれどの集合(空間)に属するか指定されることで一意に定まる。名前空間が異なれば同じ名前でも別の実体に対応付けられる。
たとえば「一郎」という人名は日本中に何人もいるため、ひとりの人間に特定することはできない。このように、同一の名前のものが複数存在し、その区別がつかない状態を名前の衝突(名前の競合)と呼ぶ。しかし、「鈴木一郎」とフルネームで呼ぶことにより他の「佐藤一郎」や「山本一郎」といった人とは区別でき、名前の衝突を避けることができる。このとき「一郎」を単純名、「鈴木一郎」を完全限定名と呼ぶ。人名「一郎」は名前空間「鈴木」に属していると捉えることができる。また、同じ「鈴木」という姓である鈴木家の家族間では、「一郎」は暗黙的に「鈴木一郎」のことであると解釈されるため、わざわざ完全限定名の「鈴木一郎」で呼ぶ必要がない。また、予め「『一郎』とは『鈴木一郎』のことである」と宣言しておけば、その後単純名で「一郎」と呼んでも暗黙的に「鈴木一郎」だと解釈されるため、シンプルな「一郎」のみで呼ぶことができる。必要なら、「日本国東京都世田谷区○丁目○○鈴木一郎」と呼ぶことで、同姓同名の人間とも区別することができる。これらの考え方は名前空間の概念に近いものである(これは分かりやすく説明するための方便であり、名前空間とは厳密にはイコールではない)。
ここでは、名前空間はソースコード上で冗長な命名規則を用いなくても名前の衝突が起こらないようにし、しかもそれを容易に記述できるようにするためだけの概念であり、普通はそれ以上の意味は持っていない(上記の地名のたとえは行政上の管轄としての意味合いがあるが、プログラム言語の名前空間には一意な名前という以上の意味合いはない)。Javaの機能、「パッケージ」では名前空間とアクセス制限、ソースファイルのディレクトリ構造の表現の機能を統合しているが、C++やC#の「純粋な」名前空間はクラスやそのメンバのアクセス制限とは無関係である。Cには名前空間を複数に分割する機能が無く、名前の衝突を避けるためにはなんらかの命名規則を用いる必要がある。
通常は文脈によって定まる名前空間が暗黙に指定される。指定したい実体に対応する名前が他の名前空間にある場合は、名前空間と名前を明示的に組み合わせることで一意に特定できる。たとえば名前bazは集合Aの中ではデータ型を表し、集合Bでは変数を表すというように指定する。
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